Chose de parler de la danse ダンスについて語ること

Autoportrait de l'auteur en danse :パリ、ダンス、言葉の敷石を踏みしめて

オーボエのあの子を探して

パリへ来て3、4年たった頃だったろうか。

その夜、私は一人でパリ・オペラ座の「サンドリヨン」を観に行った。

たまたま良い席のチケットが取れて、誰が配役されているかも知らなかった。

Cendrillon (Saison 18/19)

私はいつものように舞台裏のダンサーたちに想いを馳せ、開幕を待っていた。

左隣の席に、深い緑のヴィロードのジャケットをきた女性が座った。

肌は北欧の妖精のように透き通るほど白くて、

細い三日月型の目は、スワロフスキーのダイヤを埋め込んだみたいで、

そう、言うなれば劇画から抜け出してきたような完璧な美人だった。

とても小柄で、その肌の白さに不釣り合いなほど真っ黒な楽器のケースを抱えていた。

クラリネットですか?」私は思わず声をかけた。

「いいえ、オーボエです」彼女はニコリともせずに言った。

「私はオーボエ留学をしているものです。でももう諦めたの」

私は彼女の目を見つめ返して、言葉の続きを待った。

「フランスにオーボエ留学する人は多くはありません。師匠が少ないからです。

ドイツ式とも全く違いますし、オーボエでは将来も見込めません。

クリスマスに帰国し、音楽とは一切縁を切って生きるつもりです。

最後に、パリ管では辛すぎるのでバレエのチケットをとりました。

私は、私の留学生活を、こうして、いち観客として終える予定です。

サンドリヨンって、どんな話ですか?」

開幕のベルがなってあたりは暗くなった。

文字通り、かわいそうな灰かぶり姫が、夢を叶えていくストーリーだった。

その日の舞台は、エトワールの二人も、脇も、そつなく演技をこなしていた。

終演後、私は彼女に言った。「ボン・ボワイヤージュ」(良い旅を)

この話はこれで終わりではない。不思議な宇宙の法則が、私たちを引き合わせた。

その数年後のクリスマスの夜、再び私たちは意外な場所で

出会うことになったのだが、それは、また、次のお話。