Chose de parler de la danse ダンスについて語ること

Autoportrait de l'auteur en danse :パリ、ダンス、言葉の敷石を踏みしめて

アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル 音楽と振り付けの密接な関係(1)

パリオペラ座で現在上演中、レパートリー入りした振付師、アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルさん。

本日5月4日夜公演も再度、別キャストで観てまいりました。

日本では馴染みがない名前かと思いきや、彼女が主宰するベルギ-のダンス・カンパニー「ローザス」は、最近では2017年に来日していますね。

『ファーズ-Fase』『時の渦-Vortex Temporum』の2作品を上演。意外と認知度が高いようです。

今回「音楽と振り付けの密接な関係」シリーズとして、彼女の作品に現れる身体性、音楽性を探っていきます。

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Anne Teresa De Keersmaeker 

1960年生まれ、ベルギー・メヘレン(マリーヌ)出身の振付師/ダンサー。ブリュッセルのムードラとニューヨークのティッシュ・スクール・オブ・ザ・アートでダンスを学び、80年に最初の振付作『アッシュ』を創作。81年にニューヨーク大学(NYU)留学、帰国後『ファーズ』を発表。83年ダンス・カンパニー「ローザス」を創設。ダンスと音楽の関係を探求しながら世界のコンテンポラリーダンス・シーンを牽引。95年には舞台芸術学校P.A.R.T.S.を設立し、若手アーティストの育成にも尽力。

ローザス」は、1983年の結成からベルギー、ひいては欧州のコンテンポラリー・ダンス・シーンを率いてきました。現在は男性ダンサーもいますが、当時はメンバーは全員女性でした。

解体的な身体性、ミニマルな動き、激しい振り付け。
ケースマイケルの主題「音楽と動きの緊密な関係」は当初から見られました。

髪をなでたり、スカートをまくったり、スーツやハイヒールで踊るなど「女性」性を強調したもので、それらは、1960年代アメリカの「ポスト・モダン・ダンス」(モダン・ダンスより後の時代のダンス)のヨーロッパ版と呼ばれました。

ローザス」は「ポスト・モダン・ダンス」より、さらに身体が解体されヨーロッパの文化の厚みが絶妙に合体したダンスになりました。

ケースマイケルは、ベルギーの王立舞踊学校「ムードラ」(創設はモダン・バレエの巨匠モーリス・ベジャール)を卒業後、ニューヨークの「ティッシュ・スクール・オブ・ジ・アート」で学びます。

1982年初演した『ファーズ-Fase』、2013年初演の『時の渦-Vortex Temporum』の新旧を比較しながら分析してみましょう。

ーーー『ファーズ-Fase』

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米作曲家スティーヴ・ライヒが、1966年〜72年までに作った「ピアノ・フェイズ」「カム・アウト」「ヴァイオリン・フェイズ」「クラッピング・ミュージック」の4曲に振り付けたもの。これがまさにケースマイケルの「音楽と動きの緊密な関係」の原点になったと言われています。

「音楽と動きの緊密な関係」とは?

「ピアノ・フェイズ」でいえば〈フェイズ〉とは音のズレの事。

曲は、2台のピアノが規律的なフレーズを繰り返しますが、速度に16分音符の〈ズレ〉があるため、最初は揃っていた2つのフレーズが、やがて大きく〈ズレ〉て来る。そして最後にまたピタリと合うという、計算され尽くした音楽です。

ケースマイケルは、これを2人の女性ダンサーに振付けました。

ピアノのミニマリズムに合わせたシンプルな回転。

物理的にナチュラルで、回転する身体の「惰性」に伴い腕が振子のように上下します。

これが従来のモダン・ダンスと異なる「ポスト・モダン・ダンス」、なんですね。

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他の3作品も、そのシンプルさ、深遠な世界を見る側が自由に感じられます。

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下記の作品も、彼女の「ズレ」がよくわかる一つかな、と思い、おまけで追加。

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ダンスの女性振付家では、米国モダンのマーサ・グレアム、ドイツでタンツ・テアターを広めたピナ・バウシュが有名ですが、ベルギーで今、ケースマイケルが着々とよい仕事ぶりを発揮しています。

ーーー新作『時の渦-Vortex Temporum(ヴォルテックス・テンポラム)』

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ベルギーが誇る現代音楽「アンサンブル・イクトゥス」による生演奏との共演。

楽曲はフランスの現代作曲家ジェラール・グリゼー。3楽章からなる作品で、ピアノ、フルート、クラリネット、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの演奏です。

1996年に作曲されグリゼーは2年後に52才で急逝しました。音楽を「音波」として捉える独自の作風で、フランスでは「スペクトル学派」と呼ばれています。

ケースマイケルはこの曲を「特殊な音楽、生であると共に精錬され、厳格であると同時に野性的、有機的、原始的」と捉えました。「アンサンブル・イクトゥス」の指揮者を含む7人と「ローザス」の7人のダンサーが踊るという試みにでました。

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彼女が若いころニューヨークで学んだであろう「ポスト・モダン・ダンス」のスピリッツ、「今、ここで」の感覚が生きていますね。

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「私はグリゼーがやったように、一つのフレーズに変化を与えることにより、発展させたかった。正確な振付けのロジックには従いましたが、音楽的に起きている事象とのコンタクトを失うことはありませんでした」。 

                  ーーーーーーーーーその(2)に続く

【kotorioからのひとこと】

今日パリオペでケースマイケルの作品を観ながら「宝塚がやったほうがよっぽどキレがあって、男役が男役らしく見える」と思いました(笑)パリオペだと、特に二作品目なんて、黒のスーツに人間が着られちゃってる感じ。3頭身に見えますよ!

パリオペのダンサーは女子も男子も、ふくらはぎや大腿骨前面に筋肉がつきすぎているように思えます。ケースマイケルの作品は、素人劇団が踊ったほうがいい。

パリオペにはクラシックを踊って欲しい、レパートリー入りさせる作品だったのか、と個人的には疑問です。