ニコラ・ル・リッシュ引退後は最年長男性エトワールとしてパリオペラ座を率いるマチュー・ガニオ。
2年ほど前にパリの小劇場で「役者」経験をしていますが、好評だったこの公演、4月にパリにある日本文化会館で再演の運びとなりました。チケットは既に完売です。
挑戦したのは、ゴーゴリの「狂人日記」をもとにした演劇「Le Rappel des Oiseaux」。2016年5月にパリで行われた一時間の小作品です。
マルセイユ・バレエ学校の同窓生オリアンヌ・モレッティが監督。
実はマチューがヘルニアで休業している時に彼女と再会したのがきっかけ。
その頃マチューはダンスを今後続けられるのか不安もあり、また自分の声が好きじゃないなあ、とも考えていたそう(意外)!
声や台詞を使わない身体表現のダンスから、言語を操る役者へのチャレンジ。
イントネーションやテキストの読み方など、オリアンヌと必死で訓練したそう。
普段はとても早口だというマチューですが、言葉に重みを与えるため何度も「ゆっくりと!」と注意されたとか。
モレッティさんとの稽古風景
実は、ほんの少しダンスシーンも。ピアノ曲の演奏に合わせ踊るのですが、ダンスから台詞に移る際「ほんの少し息切れしただけで、言葉の出方が違う」そのことで、相当なエネルギー、集中力を学び直した、といいます。
さてさて、ゴーゴリの狂人日記、ですが、
狂気を演じることに関しては、マチューは既にオペラ座でニコラ・ル・リッシュの創作「カリギュラ」の経験があります。
マチューはこの作品の主役を演じることについて「彼の狂気は、彼なりの生き残る方法。不条理に押しつぶされるより、世間に理解されずとも、自分の想像の中で生きることを選んだ人」と解釈しました。
最初の曲はバッハのパッサカリア(ハ短調BWV.582)、ローラン・プティのバレエ「若者と死」で使われているので馴染みの曲。
「僕がバッハを聴くのは、そのスピリチュアルな面に惹かれているから」というマチュー。そこに演じる主役の狂気を上手に結びつけたようです。
さてさて、既に30代を迎えているマチュー。
役者にチャレンジしたのは自らの可能性を広げるためであって、自分はあくまでダンサーでい続ける、といいます。
守られた楽園を出て恐怖と戦い、より先へと進むための一種の研修だったとも。
結果にはそれなりに満足しているというマチューですが「だからと言って、定年後役者の道へ!とか書かないで下さいよ」(笑)
演劇での立ち居振る舞いを、あくまでダンスに還元するための勉強であって、彼の職業は、生涯「ダンサー」だ、と。
4月6日(土)20時開演 パリ日本文化会館
Le rappel des oiseaux - Agenda - Maison de la Culture du Japon à Paris