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Chose de parler de la danse ダンスについて語ること

Autoportrait de l'auteur en danse :パリ、ダンス、言葉の敷石を踏みしめて

シルヴィ・ギエムという生き方・その3

Danse

・「マドモワゼル・ノン」

英ロイヤル移籍後は「仕事を選ぶ」ことで有名になった。ジャーナリスト嫌いはもとよりだが、バレエ団の監督に対してもノン。英メディアがつけたあだ名が「マドモワゼル・ノン」

「ダンサーは幼い頃から厳しい身体の訓練を受け、従順な人が多い。でも私は違う」「合理性に欠けるものを常に拒否してきた。振付家には、動作に表現が伴わなければならないという人もいるが、私は動作それ自体が表現になりうると考える。若い頃から、仰々しい仕草をするよう指示されても断った。私を気分屋で高慢とみなした人も多い。薄情な性格ゆえ《役柄》を演じることができない、とも非難された。でも私に言わせればそれは逆」

1988年、オペラ座で「聖セバスティアンの殉教」公演の際。舞台芸術家ボブ・ウィルソンに教わったのはーー「大事なのは、そこに真実があるかどうか。動作は演じ手にとって何かしらの意味を持たなければならない。自分の心で感じていない動作は、どんなときでも正しくないのだということ。ボブのおかげで、私は自らの表現を純化できた。演ずるとは、クラシックのステレオタイプ化された古くさいポーズをすることではない」

映画監督兼俳優のギヨーム・ガリエンヌがギエムについて語る。以下フランス版「ヴァニティ・フェア」より。

「ある日、彼女にどんな仕事をしているのかと尋ねられた。撮ろうとしていた映画の話をしたら彼女は怒って、そんな仕事は絶対にするなと言う。アーティストであるか如何は、その人がどんな選択をするか、ということだと。その言葉はぼくを自由にした。自分には、自分がしたいことをする権利のみならず「そうする義務」がある。その場でエージェントに電話をし、その仕事を断った。そのとき、自分は生涯で初めて「アーティスト」になったと感じた」

f:id:kotorio:20170212013805p:plain ギエムに言わせれば、ダンサーが仕事を選ぶことは、長いキャリアを築く上でとても重要だ。

英ロイヤル移籍後は、バレエ団の都合ではなく自分自身に合わせて身体管理ができるようになった。仕事と休息を自分自身で管理する。ギエムはアシスタントを雇わないことでも知られている。日本製の10年手帳を愛用して日程を管理し、現役中、ほとんどケガで悩まされなかった。

この話は、フィガロ紙を始めフランスTVでも繰り返し語っている。とはいえ、初めてのケガが36歳で、ダンサーならそのとき引退していてもなんの不思議もない年齢だったことも。

英「タイムズ」紙の報道が詳しい。公演の後には温水浴。コマとザックという2匹のホワイトスイスシェパードを連れ、スイスの山中を3時間ほど散歩する。これは、身体を維持する日課でもある。

f:id:kotorio:20170212013835p:plain ギエムが政治活動にも力を注いでいることは有名だ。その点でも多くのダンサーと一線を画す。近年熱心に支援してきたのが自然保護団体「シーシェパード」。2013年の英BBC「フォース・オブ・ネイチャー」で語った。

「シーシェパードは、行動する団体。彼らは常に現場に行く。問題が起きている場所に行き、問題となっている行動をやめさせようとする。言葉を減らし、行動を増やすという姿勢は、私と通ずる。行動しなければ始まらない、という考え方のことだ。放っておけば状況は悪化するだけ。手をこまねいていていいのか」

他にも、種子の多様性を守るNPO「ココペリ」を支援している。英国、フランス、温室効果ガスを大量に排出する国に税金をおさめるより、節税した分を自然保護団体に寄付したほうがいい。それもスイスで暮らす理由の一つかもしれないと言う。

2015年、ギエムは日本の高松宮殿下記念世界文化賞を受賞した。賞金の1500万円も、自然保護活動のため使うとしている。

・ヴィーガン、自然保護活動のきっかけ

「パリ・オペラ座を離れ、ロンドンに行ったとき、アパート暮らしを始めた。小さな庭があって、そこでガーデニングを始め、植物を植え、剪定し、生長を観察した。それらは私に忍耐を教えてくれた。人間の傲慢さに気づくようになった」(マダム・フィガロ紙・以下同)

「人間は自分たちの利益のため、未来を考えず生態系のバランスを崩している。私自身は、コンポストを作っている。動物に関するテレビ番組を見て彼ら生きものの苦しみを知り、ベジタリアンになった」

正確にいうと、現在はヴィーガン(肉・魚だけでなく乳製品も食べない厳格なベジタリアン)。以前はイタリア産の生ハムやソーセージを食べていたが「倫理的な理由で決めたことなので」食べたくなったりはしない、という。朝食はフルーツ、ミューズリー、サラダ、昼食にタンパク源として豆腐やナッツ。もともと食べても太らない体質だったので、若い時はコカ・コーラとポテトチップスを好んでいたほど。食生活は大きく変わった。様々なスパイスを使ったベジタリアン料理を作るのも好きだという。

その4(ラスト)に続く