Chose de parler de la danse ダンスについて語ること

Autoportrait de l'auteur en danse :パリ、ダンス、言葉の敷石を踏みしめて

アニばら第25話 かた恋のメヌエット Le menuet d'un premier amour

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英語版タイトルは「Minuet of unrequited love」。Unrequitedは、英仏とも「報われない」、英語で「片想い」はunrequited love。フランス語ではamour Unrequitedだろうと予想は外れ、premier amour、初恋の、になっています。まあ初恋は実らないものですから同じですが。このタイトルだけ見て英仏から日本語に訳した場合、99パーセントの人間は「片想いの(初恋の)メヌエット」とするでしょう。日本語での「かた恋の」という文語的なニュアンスは、逆に言えばどんな外国語にも置き換えることが難しい。「かた恋」などという訳し方をする日本人がいるとすれば、島村藤村か堀口大学ぐらいのもんでしょう。
 
「タイトル萌え」で無駄に行数を使っていますが、今回、あの人が5話ぶり、7年ぶりに帰ってくるのです!20話以来の名作回といえるでしょう。ジャンヌ事件も片付き、物語は名実とも後半戦に突入します。ここから最終話まで、オスカル様、まともに睡眠をとられたことなんてなかったと思います。それでは行ってみましょう。1786年、オスカル様30歳です。
 
出だしは夕暮れ時のオスカル様。木の枝上に置いたビンを撃ち落します。燃えるようなオレンジ色の画面の中、射撃の訓練でございます。連隊長となられて以降も、アフター5にこうして定期的な自主練を欠かすことはございません。玉詰め係のアンドレ、片付けてオスカルに「りんごかじるかい」と投げたそれは、空中で炸裂します。中に爆弾が仕掛けてあったわけではなく、何者かが土手の上から見事、動く標的を撃ち落したのです。もうニュートンも真っ青。夕陽の逆光効果を利用し、馬にまたがったその黒い影の正体を徐々に明らかにする演出が見事。「ははは」の高らかな笑い、鉄仮面か?(しつこい)どこかで聞いたような…「わたしの腕前もお二人に見せたくてね」くわぁー、7年ぶりの開口一番がこれですよ。さすが北欧のキザ男。近衛隊副官の某様さえ薄れてしまう。この人の男性ホルモンむんむんのワイルドな色気(7年の間にアメリカンナイズされた)の前にはどんな男も女もひれ伏します。フルネーム、名乗りましたぁぁぁぁ・・・・オスカル様、夕陽をバックに駆け出します。24時間365日、一瞬のスキもないあのオスカル隊長が、彼めがけて一直線に走りだし、そのあまり途中草に足を取られてこけそうになる・・・いちもくさーんに駆けてゆくオスカル様、もう、まんま「女」顏です。過去25回、ここまでオスカル様の女度全開のシーンがあったでしょうか??その人の名を呼びながら・・・フェルゼン、フェルゼン!!嗚呼フェルゼン!!その後、馬に駆け寄って、bisouぐらいしちゃったんでしょうか?(注>ビズーはキスではなくって、フランス人が挨拶代わりにやる、チュッチュと二回ほど頬をする寄せる仕草。男も女も、特に性的な意味はありません)そんな画面右端に小さく佇むアンドレの表情は見えませんが・・・彼こそ今、空中炸裂したリンゴ状態です。
 
opあと。オ「独立戦争が終わってもう2年、どこでどうしていた?」今ならメールでどうにでもなりますが、せめて自分の安否ぐらい、使いを走らせるぐらいのことしてくれたっていいじゃない!と(感激で胸いっぱいで言葉すくなな)オスカル様の代わりに言ってやりたい。
熱病を患って寝たり起きたりの生活が続いていたんだそうな。「久しぶりだ、こんな本格的なフランス料理は」といって平らげているのはcuisse de poulet(鶏のもも肉)でしょうか?ジャルジェ家のワインカーヴの中からは、1730年代ぐらいのBordeauxを引っ張りだしてきたと仮定します。(ちなみに1730年からの40年間は、Bordeauxワインの大繁栄時代とされています)ラトゥール、ラフィット、マルゴー、オー・ブリヨンといった大御所が貴族たちの間で有名になっていたこの頃。オスカル様が帰還した男をもてなすのに選んだドメーヌがあるとすれば、圧倒的なエレガンスさを誇る世界最高峰ラフィット、あるいは香り高いワインの女王マルゴーか。ここはタンニンのまろかやさゆえ「女性らしい」と形容されるマルゴーに軍配をあげましょう。
オスカル様、もりもり食べるフェルゼンを前に、ワイングラスを回すのみ。ばあやの腕によりをかけた今宵のご馳走も、まだ胸いっぱいで手がつけられない様子です。その脳裏には7年前、彼の去っていった姿がリフレインされます。・・・オスカル様、ようやく「本当に、無事でよかった」の一言。夢にまで見て一度は諦めかけたこの一言を、今、生きて帰ってきた本人を前に言えた・・・胸の中で「夢ではないのだな」と何度もつぶやいたでしょう。
改めて、暖炉前でのワインターイム。「《あなた》のお屋敷には明日使いを出そう。我がジャルジェ邸が責任を持って伯爵の旅のお疲れを癒して差し上げますと。一週間でも一ヶ月でも、どうぞゆっくり」きゃ〜。はじめて《あなた》って呼んだ〜〜〜。7年の歳月がそうさせたのです。アンドレも一応賛成のふりをしてみますものの・・・。おっとフェルゼン、そんな二人の変わらぬ厚い友情に、感極まった様子。戦地、そして病からの帰還・・・生きて、ここにあること、自分を迎えてくれる友のいたことを心から、有り難く思ったことでしょう。男ながら「生きていて、よかった・・」と目頭を押さえます。
 
5分30秒。フェルゼン、戦場での早起きの癖が抜けないらしい。オスカル様、窓の外にフェルゼンの姿を認めて、ブラウスのボタンなんか閉めてるから、一瞬、想像してはいけないことを想像してドギマギしたのは私だけ??「よく眠れたか?フェルゼン」と声をかけたところを見ると、よけーなお世話だったようで。この様子じゃ、オスカル様なんて、昨夜は自室で一睡もできなかったんでしょうね。それこそ、本人の前では気丈に振舞っていた彼女の方が「生きていて、よかった・・・」と枕を濡らしたかもしれません。
ーー早くアントワネットに会いに行け、と朝から直球のオスカル様に「会わずにスウェーデンへ帰るつもりだ」とのフェルゼンの言葉を聞いてはっと顔を向ける6分7秒、29秒の二度のオスカル様のブルーの瞳を見よ!!フェルゼン曰く「終わった。終わってよかった恋だった」それを確認するためにフランスに立ち寄っただけだと。アントワネットには知らせないでくれというフェルゼンに、一瞬、切なさでちぎれちゃいそうなオスカル様の複雑な表情ーーーしかもオスカル様のお言葉に甘えて、1、2週間もジャルジェ家にお世話になることに決めたんだってさーーーひええええええ。
 
アンドレとフェルゼン、20代の失われた青春の7年間を取り戻すかのごとく、ちゃんばらごっこしたり、馬で競争したり。そんな二人をオスカル様少し離れて切実な表情で見ています(が、アンドレも辛かっただろうなーーー)・・・。
愛する人が帰ってきた。しかもアントワネット様との恋は「終わった」と断言し、つまりフランスへはこの自分に会うために真っ直ぐ立ち寄ってくれた・・・??ホントだろうか、ホントだろうか、でもそれじゃ、アントワネット様の方は・・・なんてことを考えてたんじゃないかと。って私がするまでもなく、オスカル様の心の中の声がちゃんと流れました。「思ってもみなかったことだった。フェルゼンの心にもうアントワネット様はいない・・・本当だろうか、そんなこと。でももし、もしそれが本当なら、ここにいるフェルゼンは私がこの世でたった一人、愛してもよいと思った人・・・」
 
8分、首飾り事件での活躍と昇進をフェルゼンに賞賛されるオスカル様。この時の答えが「ええ、まあ・・・」ですよ!?だってフツーなら、こんな返事しませんでしょ!オスカル様らしくない。「いえ、これまで以上に王家をお守りする責任が増し、気を引き締めております」とかなんとかキッパリ言ってさらりと話題を変えたでしょう。彼女の辞書の7割がたは謙譲語ですから。そんな人ですから。
 
「女として生まれたのが不思議なぐらいだ」とまあ人の気も知らないで禁句を口にするフェルゼン。「女」と呼ばれた瞬間のオスカル様をちらりとみた横目のアンドレのカット、なかなかの演出です・・・と感心している間も無く、アンドレ、撃たれたかーーーーー!?いえ、かろうじて無事でした。平民に狙われる貴族の館。平民のアンドレが、そんな最近の情勢を語り、「あなたが7年間いない間に、パリも、ベルサイユも、そしてフランス全体が少しづつ代わり始めています」という。同じセリフは、オスカル様では口にできなかった。
・・・ということで、3人揃ってマントを着て夜のパリ見学ツアー。
9分05秒、出た、出た、「本日のこの人」。吟遊詩人のおっさんです。「貴族の時代はもうすぐ終わる。死ね、太った豚はみんな死ね!」アップ怖いんだけど。ホラーかと思っちゃう。
フェルゼン、こんな街の様子に心からショックを受けた模様。あーあ、ついに「オスカル、やはり私はベルサイユへ行こうと思う」だってさ。オスカル様、黙ってうなづくだけ。内心「わかっていたよ・・そんなことは・・・」(byアンドレ37話・フライングしまくりですみません)とでも言わんばかりに。
 
ジャルジェ邸。アンドレが銃の練習の時間を知らせに来る。この時部屋の中にいるオスカルに向かって「練習の時間だ」じゃなくて「練習の時間だけど、どうする?」と声をかけているところがアンドレらしい。お前がそんな気分じゃないことはわかっている、だから無理に出てくることはないが、俺はいつでも準備ができているからその気になったら声をかけてくれよ。そんなニュアンスなんじゃないかと思います。案の定、とってもアンニュイなオスカル様。ポンと鍵盤を叩く指の音が・・・次の画面で銃声に。まるで自分の心のもやもやを撃ち抜くような演出です。ばしばしと標的(アンドレが投げるカラの瓶)を撃ちまくるオスカル様。一度銃を手にすれば、泣く子もだまる集中力を取り戻します。やはり武官のオスカル様。心に鎧をつけちゃうのが手っ取り早い。感じなければ、痛まない。苦しむこともない。そうだ、私は軍人だーーーと、一瞬オスカル様の射撃姿の止め絵が入るのですが、不釣り合いとも言える笑顔の彼女が返って痛々しくて。アンドレ、瓶を投げながら「フェルゼンのことなんて忘れちまえーーいやお願いだ、忘れてほしい・・・」のいつかの名台詞を繰り返していたかも。
 
12分48秒。フェルゼン、アントワネットに会いに行く。「もう熱く燃やさない、かわりにセーヌの流れのごとく、永遠に愛する人のそばにいる」って決めたんだってさ。スウェーデン、帰らなくっていいんだ・・・。ちなみに髪はちゃんと散髪屋で整えてから会いにいってるんだ。
 
13分02秒。今話3回目の、夕陽&オスカル様の射撃シーン。かつてこんなに夕陽のあう女主人公がいただろうか・・・。
アンドレ、ここでロングな名言。「見ろよオスカル。渡り鳥だ。帰って行くんだな、南へ。やつら、どんなに大空を飛ぼうと結局は帰って行くんだ、決めたところへ。誰にも止められはしない。誰にも」
最後の一文が英語字幕では「Nobody can't stop them......nobody」となっていて、RBソングのフレーズみたいです。この時のアンドレの横顔、一時停止してみてみて下さい。きりっとしていて、素敵です。ここ数日、あなただって辛かったよね。その言葉の意味を理解しているオスカル様の、アンドレとは違って険しいお顔。ーーーフェルゼンは、アントワネット様のもとへ帰っていったんだと・・・。
 
そのころ、当のフェルゼン、アントワネットの手にくちづけをして幾つか進言。曰く、トリアノン離宮を出ろ、ポリニャックと手を切れ。オスカル様はじめ周囲の誰が忠告したって(そういえばメルシー伯、まだ側近として仕えているよね?最近みないですけれど)一切聞き入れてもらえなかったことを、この7年ぶりにひょっこり顔を出した外国人のツルの一声でちゃんちゃん、と決着がついちゃうんだからまー側近の方々こそ、情けない思いをしたことだろうとお察しします。そりゃね、最愛の人が祖国をすてて我が身全てをお捧げしますっつーんだから、女にとってこれほど殺し文句はないというか。
 
14分15秒、オスカル様、激しい曲を弾いています。外で馬を洗っているアンドレ、その曲を聴き、オスカルのいる部屋を眺めて右手の雑巾をぎゅっと絞ります。このシーン、突っ込んでいいのやら悪いのやら。
 
舞踏会での婦人たちのうわさ話。私、この貴婦人AかBの声役やりたいなー(笑)
 
アンドレの報告によりますと、「ポリニャックや取り巻きの権力が日増しに衰えているそうだ。フェルゼン伯のご進言をお聞きになったのだろう」とのこと。国軍連隊付きで、毎日ベルサイユに行っているらしい。ということはとっくにジャルジェ邸はあとにしたわけですね。心臓バクバクのひとときの同居生活なんざして、もうオスカル様の心は完全に奪われちゃってます。寝てもさめてもフェルゼン。
トリアノン離宮から本宮殿までの警護通達を指揮するオスカル隊長を2階のまどからフェルゼン伯が見下ろしています。きゃー、目があっちゃった!フェルゼンは軽く右手を上げて紳士的なあいさつ。
 
当然ながら、その王家の列を弾薬持った男どもが襲うわけですが、こんな時のための近衛隊。オスカル様がその技術レベルを引き上げてしまっているのでシロウト悪党なんざ、赤子の手をひねるようなもんです。「緊急配置につけ!」と動じもせずに冷静な指令。一人逃げた男を追うオスカル様、後続の隊員たち、馬のスピード感でアニメならではの迫力を味わわせてくれます。
17分、廃墟に続く地面の血のしたたりを辿ってオスカル隊長一人中へ。胸から大量の出血をし、もはやこれまでと思われる男が無駄に最後の一発を放つもオスカル様に何事もなくかわされる。オスカル様の表情がないのが怖い。問題はこの後。男が「フランス、ばんざい」といって息絶えるのです。え?どっかで聞いたセリフ。ってか原作のオスカル様バスティーユでの今際の名台詞ではないですか!もちろんヅカばらだってこの名シーンはカットしやしませんよ。ところがアニメ版では、主人公のこの世最後のセリフを、こんな物語中盤で、名前すらない「敵の男A」役に言わせてしまった。
最初に見た時は「ん??」としか思わなかったけれど、いったん最終回までみて、アニメ版のオスカル様が何と言って死んで行ったのか、がわかった後では、「意味を持たせた」対比であったことにあらためて気づく。この場面の言及はその時まで待ちましょう。
そんなことより、いまここでもっと問題なのは、オスカル様。こんな時に限って頭に浮かぶのは、さっきのフェルゼンの姿!!
「しっかりしろ、オスカル!!」と自分で自分を奮い立たせるものの・・・・オスカル様、しょーがないよ・・・・自分で自分のコントロールができないなんて、おそらく彼女の人生初めての経験ですもの。18分、そんな自分をどーしょもなく責めていて(根が真面目なオスカル様ですから)。アンドレに「オスカルどうした?怪我でもしているのか?」などと言われてしまう。もう他人にもバレバレ、隠しきれないと悟った彼女はあとはジェロ様に指揮をとるよう言ってくれ、と、早引けすることにします。これだって人生初でございましょう。
馬で駆け出すオスカル様。「あなたは誰よりもあなたを必要とし、あなたを愛する人の元へ戻っていった・・・素晴らしいことだと、オスカルは思います。素晴らしい方だとオスカルは思います・・・あなたを心から・・・はじめて一人の女として・・・」《あなた》を連発し、自分のことをオスカルと呼び(若干違和感あり)、水の中に馬を飛び込ませてゆくオスカル様ーーーくぅううううう、辛すぎるーーーー。
 
18分59秒。パニエやらコルセットやらの準備で慌ただしいばあや。この辺りのセリフはほぼ原作通りです。「何?オスカルがドレス?」というアンドレのすっとんきょうな声も原作まんまで嬉しい。オスカル様とばあやの多少コミカルなやり取りの間、暖炉前でうろうろするアンドレ、「正気かオスカル?俺のオスカルがちゃらちゃらドレスなんぞ着て他の男どもと踊ろうっていうのか?」と早くも俺の女呼ばわりです。いざ前にしたその姿ーーーアンドレの目はテンに。チカチカ星のような光まで飛ばせています。
20分ーーー最初で最後、オスカル様の「女装」(?)お披露目〜〜。高貴な外国のマダムオーラ、貫禄ありすぎます。
ヘアスタイルも、ドレスも、原作よりいいと思います。ギリシャ彫刻なんかよりよっぽど生身のオスカル様のほうが美しい。
マダム、とフェル伯に声をかけられた時のオスカル様の背中に注目。おおおおっ、大胆なVカット!うなじもセクシーです。ひとしきり、無言でダンスを踊っている間、フェルゼンは美しい親友、オスカルのことを話し続けます。ぐいと引き寄せた時の21分39秒で、一時停止してごらんなせえ。背中のVカットの開きにフェルゼンの左の親指が、直接オスカル様の肌に触れているんです〜・・・・きゃああああああ〜〜。
原作ではこの時禁断の言葉「・・・・オスカル・・・?」を言ってしまうのですが、アニメ版、そこは変えていて「もしや、あなたは・・・」×2回、となっています。逃げるオスカル様、ちゃんとドレスの端をつまんで走っています。こけなくてよかった。
噴水前で「フェルゼンの腕がわたしを抱いた、フェルゼンの瞳がわたしをつつみ、その唇がわたしを語った・・・・諦められる、これでわたしは諦められる・・・・」(涙)
原作のギャグタッチを一切排除し、全編シリアスで貫いたアニメ版です。この後黒い騎士をドレスのまま一本背負い!のシーンが無く、オスカル様、ひとしきり、気の済むまで涙を流し続けたことと思います。