Chose de parler de la danse ダンスについて語ること

Autoportrait de l'auteur en danse :パリ、ダンス、言葉の敷石を踏みしめて

アニばら第23話ずる賢くてたくましく!  Forte et rusée !

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英語版タイトルは「Cunning and tough!」です。

今回も先に時系列をまとめておきましょう。
前半1785年8月15日、オスカル様29歳、
後半1786年5月31日、首飾り事件判決、オスカル様30歳です。
オスカル様もついに三十路になっちゃいました。花の20代を、かなり端折って生きておられます。
 
まずは宝石商べメールの訴えから、首飾り事件の発覚。
5分29秒のところで、ジャンヌがニセ王妃役のニコラ・ド・オリバの口封じをしようとやってきます。
しかし目の見えないニコル、入ってきたジャンヌに対しても「代金は先払いが決まりです」を繰り返し続けます。
ジャンヌ、短剣を振り上げたはいいが、そんなニコラの姿を見て、どうしても殺せない。あんたの身も危なくなってきたから、ざっと100リーブルあるから、と袋を渡し、早くパリを出るように諭します。
二つの疑問。1)前回の仕事の報酬として、ニコラは10年働かなくてもいい大金を手に入れていたはずなのに、こうして娼婦を続けているのはなぜ?? 2)100リーブルの金貨の袋を用意していたジャンヌ、やっぱりニコラを手にかけることなんて最初から考えられなかったのでは・・・
 
6分54秒。ジャルジェ家のピアノのあるお部屋。ねえ、なんでロザリー、勝手にピアノ弾いてるわけ?
おかえり遊ばされたオスカル様、「いいんだよ、好きな時に弾いて」この娘との同居生活も、かれこれ10年近くになるのではないでしょうか。
ロザリー、そんな後になってジャンヌ姉さんのことを切り出します。「なんとなく言いそびれてーーーあんな姉ですから」
オスカル様「犯人と決まったわけではないんだよ」 ・・・田島さんの声、「・・・だよ」のところが、諭すようでとっても優しい。原作オスカルはこういうトーンでは喋らない気がします。
「あの姉なら、やったのかもしれませんから」そりゃあ、一度は実の姉に殺されかけたのですからそれぐらいのセリフは当然でしょう。
でも母さんの形見の指輪をオスカル様に頼むなんて、どこまで面倒みりゃいいんだか・・・お忙しい連隊長の仕事を、これ以上増やさないように。ロザリーのための行動はいつだって、あくまでプライベートでのご厚意なんだからね。忘れんな!
 
8分37秒。パリのカフェ兼安酒場「Les Ecuries」には、革命家三王がお揃いです。画面3人アップのシーンは、ついに、こちら側の主要人物が一堂に・・・と早くも胸が高鳴ります。演説するロベスピエール先生、ベルナール、そしてサンジュストの姿もありますが視聴者への紹介はまだこの少し先で。
 
9分27秒。ロザリーから預かった母の形見の指輪を牢獄のジャンヌに届けにいくオスカル様。短い会話が交わされます。
「どうして安物だとわかる?見もしないで。必ず渡すとロザリーと約束したんだ」
この期に及んでもまだ自分を心配してくれる人のいたことに、ジャンヌは感じるものがあったと思います。で、その指輪、返って法廷でジャンヌに変な勇気を与えてしまうのですが。
 
ジャンヌの裁判です。しらを切り続けるジャンヌ、でもオスカルはそっとロザリーの耳元で「姉さんはお前の渡した指輪をつけているぞ」と囁きます。Give me power!とばかりにジャンヌは指輪頼み。「神だろうとあたしをさばくなんて許せない」
しかしこの子の登場には、・・・・ニコル・ド・オリバーがジャンヌ本人であることを証言しました。
「・・・・参ったな・・・」自嘲気味に笑いながらつぶやいたその言葉、ぞくっとさせられるけど、何か、ジャンヌらしい一言だな、と思わずにはいられない。
 
ジャンヌ、負けていません。王妃とのレズビアンの関係だった、その証拠にオスカルを持ち出します。
怒ったオスカル、剣を抜こうとしますが、二つ隣の席のアンドレが素早く乗り出して「ここは法廷だぞ」と制する。いいプレーです。
 
傍聴人を見事味方につけたジャンヌ。「なるほど、素晴らしい裁判ですね、ロベスピエール先生。」これが死の大天使と呼ばれたサンジュスト、この時点では20歳そこそこかも。視聴者への正式なお披露目です。実在の人物、わずか26歳でロベスピエールとともに断頭台の露と消えますが、アニメ版では急進的な「テロリスト」という設定で、かなり過激な単独行動にでて先生にも持て余されているような存在です。ロベスピエールを心底尊敬しているわけでもなく、彼は彼なりのビジョンのもと我が道を行き、ロベルピエールを利用している感すらあります。その辺はのちのちの見所となりますのでお楽しみを。原作愛読者には「花のサンジュストくん」としてあの長ったらしいfull nameで知られています。「あはん」とかいっちゃって。オスカル様をして「すごい美女がいる」と勘違いされた名誉な役回り(?)。史実でも『オルガン』の作者であります。
 
裁判帰りの馬車の中で、オスカルへの姉の侮辱を誤るロザリー。しかしオスカル様「たくましい、たくましい生命力だ。絶えず断崖絶壁の上に立ちながら、ひるむどころか大胆でしかも余裕すらある。ジャンヌーーわたしが今までみたこともないような女性だ」
 
1786年5月31日、判決。終身刑となったジャンヌの牢獄には、平民ばかりか貴族までもが、今や民衆のヒロインとなったジャンヌを一目見ようと長蛇の列を作っている。アントワネットは貴族までもが、とその理由がわからないのだが、オスカル様「恐れながら、その貴族たちは王后陛下への離宮への出入りを許されずに、宮廷を去った者たちでございます」と言う。
アントワネットとオスカル、それぞれが違う道を歩みはじめている様子が、これから回を追うごとに深まっていく。
 
ラストがなんでこの人のセリフか。アニメ制作陣はかなりの比重をこのジャンヌという、ずる賢くてたくましい女に置いている。
そして、それだけではない、そうしなければ生きてこられなかった彼女のほんとうの心を最後につぶやかせてやるのである。
「面白かった・・・久しぶりに、ゾクゾクするぐらい・・・あたし・・・子供の頃にこんないたずらしたかったな・・・みんなと・・・」
 
このつぶやきは、のちにロザリーが言う「うそよ。だって物心ついた時から、あたし姉さんが心から笑った顔、みたことないものーーー」というセリフと対応している。アニメではジャンヌを単に、王家、アントワネット、貴族らに対する恨みのあまり悪事を企んだ女としては描いていない。むしろもっとパーソナルな部分で、彼女自身が「貧しさの犠牲者」であり、愛に飢えた子供時代を取り戻すかのごとく、という風にも理解できる。彼女がほんとうに手に入れたかったのは、愛に満ち、最低限のパンの心配をしなくてもいいつつましい生活。そんな平凡な女がロザリーと対照的にこのような道を辿ったのも、一つの時代の悲劇だったと言えるのではないか。