Chose de parler de la danse ダンスについて語ること

Autoportrait de l'auteur en danse :パリ、ダンス、言葉の敷石を踏みしめて

アニばら第13話アラスの風よ、応えて…Vent d'Arras ! Réponds-moi !

f:id:kotorio:20170809024924j:plain

英語版タイトルは「The wind of Allas, please respond」です。英語版が「答えてください」フランス語版は「私に答えて」というまあ取るに足らない違いはありますが。

 
今回は「ナレーション賞」です。そしてここまでを担当された長浜監督の最終話でもあります。次回14話からは一応名目上は監督不在ということになっており、19話から、正式に出崎監督に交代となります。ですから、ここまで前半を引っ張ってきた「長浜節」の演出の見納めともなります。以上のような理由から、アニメ版この回までを「前期」と区分しました。
 
出だしはジャルジェ家、オスカル、アンドレ、ばあやのコミカルな3人組の会話となっています。後半では、こんな風になんの心配もせずに画面を見ていられることなど皆無となっていきますので、この幸せそうな3人の光景を、目に焼き付けておくことをお勧めします。
オスカル様が謹慎処分をくらった件について、ばあやがアンドレがついていながらなにやってるんだ、お前のせいだと喚きちらす様子が可愛らしい。「どじ!まぬけ!」といってフライパンでアンドレの頭をひっぱたきまくるのですが、あれ?このセリフ。確か原作で、オスカルがアントワネットのサロンに招待されたのを断ったとき、アンドレが「このどじ、どんま、まぬけ!」という。これって、ばあやの口癖だったんですね!!
原作ではオスカル様のセリフは「私たちの入る病院は遠いゆえ」となっていましたが、アニメでは「遠いからな」に変わっています。旅の支度をしてくれと切り出すオスカル様のこの一連のセリフ、トーンがとっても優しすぎる・・・まるで女そのものなのです。原作のオスカルだったら、もっと命令口調で、凛として、男勝りで、だからもう少し低めの声(あくまで私の脳内妄想)なんです。だから最初に田島オスカルの声を聞いたとき、女性っぽすぎる・・・あまりに高くて優しすぎるーーという違和感が否めなかったんですが、今となっては、田島さん以外考えられないというか。
以前も書きましたが、仏語版オスカルって、声が低めでわりと怒鳴ってものをいう感じ。アンドレは更に一段低い役者さんでこれはこれでちょっと違和感あるのですが、まあ、原作からイメージするオスカルの声と言ったら客観的に見て、仏語版の方が原作に近いのかもしれません。が、私は「アニばらはアニばら」で、原作とは別人格のオスカル様という設定で、受け入れているので。むしろこの「優しい、女らしい声のオスカル様」が原作と違う、アニメならではの魅力なんです。
 
ってop前のつかみの部分だけでこんなに無駄に語ってどうするんでしょ。本編はこれからです。
 
二人のアラスへの旅路、ええ、微笑ましくていいじゃないですか。「アラス」と言えばベルばらファンの聖地です。
 
フランス北、ノール=パ・ド・カレー地域圏です。昔のアルトワ地方と呼ばれていたところ。町並みなんかがちょっとスペインっぽくって素敵です。1940年には「アラスの戦い」っていうのも世界史でありますよね。あと数分後に登場する「彼」の出身地でもあるわけです。
オスカル様ご考案の本日のメニューですが、これは原作には出てきません。田舎風の野菜スープ、それにブイユ・アラ・カレー(bouille a la calais)これはどのような料理かというと、(アラスのあるカレー地方の)田舎風ごった煮、とでも訳せばいいのでしょうか。そしてアラス亭オヤジの手作りのチーズにカルヴァドスとのことです。
ここで英語字幕に大変なものを発見してしまいました。ビデオを止めて日本語の発音を確認したのですが、オスカル様
「アラス亭」オヤジ、と言っていますよね?今夜お泊りになるレストラン&宿の店の名前が「アラス亭」だと思うのですが、英語字幕、「アラステ」オヤジ、と勘違いしたのか、「Monsieur Allaste」になっているんです!!あのオヤジの名前が「アラステ」さんだと思ったのでしょうか???こっ、これは・・・世紀の大発見です・・・。これ、他のファンブログなどでツッコミを入れている方って既にいらっしゃいますか??
 
早駆けで行こう、やっほう!!のアンドレと、笑うオスカル。しばし幼馴染み同士に戻ったかのような、平和な道のりが続きます。
馬に水を飲ませている休憩地で、スガンのオヤジさんという人に出会います。アンドレが「久しぶりだな」と言っているところを見ると、彼もオスカル様のお供をして、この領地へ幾度となく訪れているのでしょう。39話で「アラスで見たあの素晴らしい朝日」がオスカル様の口からでるのですが、それは、きっとこの時よりももっと前に、まだ「少年」同士であった二人が見た、若き日のことだったのかもしれません。
 
「大きくなったね」とジルベール坊やに声をかけるオスカル様が、まあ、なんと女らしいこと!!(声が、ですよ)
 
さて宿に到着しました。看板がちゃんとフランス語表記だったので良かったです。原作では「旅館・お食事 アラス」でなんだか興ざめってかんじだったので。
ううっ。ということは「アラス亭」ではないのか??こ、ここは苦し紛れに、オスカル様たち常連の、通称なのだと理解して、先へ急ぎましょう。
<原作ではオスカル様はなぜか近衛の軍服を身につけていて、オヤジは近衛士官章をみて、出世されましたなあ、ということがわかるのですが、それってちょっと無理があるように思えました。謹慎中のプライベート旅行(視察)で任務ではないのですから、ここは軍服ではなく、アニメ版の私服のほうがしっくりきます。オスカル様出世の噂もこの村まで届いている、というほうが自然です。
<
さて。いました!この人です。若き日のマクシミリアン・ド・ロベスピエール。世界史のテストで聞かれてもいないのにfull nameで答えたくなった記憶のある方も多いと思います。
いやあ、優秀な者同士の邂逅のシーンというのは美しいですなあ。挨拶の仕方といい、お互いの礼儀正しい口調といい、こういう人間同士の出会いは、いつ見てもフレッシュな気分にさせてくれます。弁護士になるつもりでいます、というロベスピエールに、オスカル様が言った次のセリフ「そう・・・それでこちらへは休暇で?」の「そう。」の部分、嗚呼!もうどうやって言葉で表現していいかわからぬほどの、まるで「ため息のような」相づちーーーーぎゃー・・・オスカル様っ、せ、セクシーすぎやしません!????
「そう。」でドキドキして、鼻血が出んばかりに、萌えまくっている私って・・・もう相当にやばいかもしれません。
 
さてここからがちょっとアニメオリジナル入ります。原作ではロベスピエールは出身地に「時々帰る」ことになっていたんですが、
アニメでは「休暇だなんて、とんでもない!」と声を荒らげます。隣の小作人を助けに来たのです。「・・・・(事情)で、弱いものいじめをするんだ!」とお子様がたにも大変わかりやすい背景説明になっています。アニメ版やるなあ・・・大人が見ると、これは原作への挑戦状か?とはらはらしてしまうのですが(笑)
さーらーに、ロベスピエールくん、国王への祝辞を読んだことを 原作「少し」後悔している アニメ「ひどく」後悔している、となっていますね。アニメ版、やるなあ・・・。紅茶のおかわりはよろしいんですのね。「またお目にかかりましょう」とか、知識人同士の別れの言葉は、さりげなく実生活でも応用したいものです。アニばらは、正しい日本語、および会話、敬語のよい教材だと思います。全国のお母様方、ぜひアニばらを教育に普及させましょう。
ロベ「死にかけたフランスを救ってみせる。死にかけていても、僕はこのフランスを愛しています」
これはオスカル様への個人的な宣戦布告、ということではなく、貴族、あるいは身分制度そのものへの彼の思いを、
取り急ぎオスカル様に早い段階でぶつけているわけです。オスカル様にしても、平民の側にこれだけ知的で国に対しあつい思いをもつ彼のことを、率直過ぎるとはいえ、決して失礼だとか思ったわけではないのです。それより、言われた内容に深く、深く考えさせられてしまっているのがまだ、この段階のオスカル様です。
 
アントワネットがロベスピエールによって無茶無茶ないわれかたをしていたころ、当の本人はまたも宮廷で脳内お花畑状態です。ポリニャック夫人登場です。この人、好きじゃないキャラなので、物語上、また歴史上はいかに重要であろうとも、無視します。
 
さて美味しいお食事ものどを通らなかったであろうオスカル様をアンドレ、きにするな、と慰めます。食後のカルヴァドスでも飲んでいるのかと思ったところ、スガンの息子、ジルベール坊やが高熱にうなされているという知らせが。
スガンのお家に駆けつけます。一家ははたらけどはたらけど塩とジャガイモしか食べられない。王妃様が悪いという人もいるけれど、私にはわからないーーースガンの絞り出すような告白が続きます。「<どこの世界に自分の息子が可愛くない親がいますか・・・・」、それでも一家の主として、全員を路頭に迷わせるわけにはいかない、スガンを諦めるという苦悩が語られます。
ちなみにこの時スガンの娘さんがいます。「おとうさん、牛を売りましょう」ぐらいしか主だったセリフがありませんでしたが、
この声をやっているのが戸田恵子さん。のちの劇場公開版のオスカルを演じている人です。私は劇場版を見ていないので、まだ戸田オスカルを聞いたことがありません。聞きたいような、それでいて、永遠に私の中では田島オスカルの声だけを焼き付けておきたい気もどこかにあるような。
ちなみに、宝塚版のオスカルナンバーワンは私の中では涼風真世さんです。ふふふ・・・。
 
さてスガンの息子、ジルベール坊や、さっきすれ違った時は、どうして怯えたあんな態度をオスカル様にとっていたのでしょうか。
睨みつけてさえいましたよね。それはこの小さな坊やの中では「貴族=偉いヒト=隣の小作人がやられてるみたいに、僕たちをイジメにきた悪いヒト」の図式があるのではないでしょうか??
でも病気のこの期に及んで「オスカル様、とうさんを叱らないで…牛は…大事なんだ、売ったら困るんだ」なんて、フランダースの犬の少年ばりの泣けるセリフを言います。
 
これほどまでに貧しい農民の暮らしに、そして王妃様への憎しみに、大・大・大ショーーーックを受けていたオスカル様、ついに火がついちゃいました。スガンの子を抱きかかえて、涙を流しながら医者へと馬を走らせます。
 
病室の窓から、星を見上げて、神様にお祈りするオスカル様。ジルベール坊やの命をお助けください、そしてあの方(アントワネット)の優しさが、民衆に理解されますようにーーー。
 
アラス亭のオヤジ(とよぶことにします)も明け方駆けつけ、平民の96パーセントのほとんどが飢えに苦しみ、病気になっても医者にもかかることができない、という現状を語ります。
<
「メインテーマ変奏A・ちょっと劇的バージョン」(勝手に名付けてゴメンなさい)とともに、オスカル様、激情にかられるように馬を飛ばします。自分の領地がこんなことになっているなんて・・・それでなくても、オスカル様はこのところ、平民の暮らしぶりがどんなものか、何かにつけて考えさせられているのです。今回のことがそれに輪をかけ、彼女は何も知らなかった自分を恥じ、情けなく思い、けれどこの気持ちは、怒りは、いったいどこへぶつけていいのかわからないのです。そんなオスカルを落ち着かせようとするアンドレの言葉も虚しく、オスカル様、勢い余って落馬してしまいます。
アンドレ、そんなオスカル様の一部始終を見て「氷のように冷ややかなくせに炎のように燃えさかっているーーー」はっきりと、オスカル様が好きだ、ということを自覚します。
 
オスカル様の脳裏にリフレインされるのは、ロベスピエールの、スガンの、アラス亭のオヤジの言葉・・・
ーーーオ「何だ、今のは」 ア「ん?風の音だろう」 オ「そうか、風か・・・」
で、キターーーーー!珠宝の名曲「優しさの贈り物」ラストの盛り上がり、サビ?の部分でございます。
4話「バラと酒とたくらみと・・・」でオスカル様がデュバリーに啖呵を切って以来の、堂々の「締めっぷり」でございます。
 
で、「ナレーション賞」。私の中では、全40話通して、ダントツ頂点に輝くこのフレーズ無くして、アニばらは語れません。
「それは、ほんとうに風の音だったのだろうか・・・。
 貧しさの鎖に手足を縛られた民衆という名の巨人が、苦しみに耐えかねて漏らした吐息ではなかったか。
 オスカルの聞いた物音は、やがて嵐のような革命につながっているかすかな胎動ではなかったかーーー」
 
暗い未来を予感させる黒っぽい鳥が群れをなして、二人の頭上を覆うように何処かへと飛んで行きます。