Chose de parler de la danse ダンスについて語ること

Autoportrait de l'auteur en danse :パリ、ダンス、言葉の敷石を踏みしめて

アニばら第12話 決闘の朝オスカルは…? Le matin du duel, Oscar… ?

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英語版タイトルは 「Oscar at the Duel at dawn」dawnは英語で明け方とか夜明け、という意味ですね。at が続くのがあまりきれいではないような…。仏語版は日本語直訳といった感じです。

 
時期としては1776年ごろ、オスカル様20歳ぐらいの設定。当時フランスに「成人」という概念があったのかどうかはわかりませんが。
 
今回はいよいよ、あのにっくきドゲメネとの対決です。原作では決闘に至りませんが、アニメ版では実際に二人を対決させるのも見所です。
その経緯と結果が、オスカルの人となりをよく表し、原作を一層深めた仕上がりとなりました。
 
狩りにでかけるドゲメネに、危うく刃傷松の廊下になりかけるオスカル。ここでもまだ怒り冷めやらぬ彼女を、アンドレが引き止めます。
opあとは打って変わってコケティッシュな場面、ローズベルタンのもとドレスを作りまくっているアントワネット事情に通じているアンドレ。
贅沢がすぎると思わないか?というアンドレに、今度はオスカルが「今はそれを言うな…」と女性らしい気遣いを見せます。
主人たるアントワネットの気持ちをまず理解し、寄り添うことを職務と言い聞かせているオスカルにとって、それがフェルゼンのいなくなった寂しさを埋めるためのものであることは明白。今しばらく、目をつぶって見守ってやりたいと思うその優しさが、お馬鹿アントワネットにとって、結果的にどういうことになったか・・・。
アントワネットのアホぶりがエスカレートするたび、出てくる母マリアテレジアの「心の声」シーン。
「歩くこの世の常識」として、視聴者をcommon senseに引き戻す役割を担っているわけですが、
それにしてもアントワネット、欲しいものを手に入れても「…この想いは…何???」と自分のことだけに酔っている。
そんな暇があったら、国民のことを考えなさい。
 
原作ではオスカル様も晩餐に招待されておりましたが、アニメでは席には加わらず、背後で護衛?しておられます。
さてここで貴族の皆様がたしなんでいらっしゃるワイン、「1692年のchâteau Iquemo」(英語表記)
とはいったいどのようなワインなのでしょう。
ネットでいろいろ調べてみたのですが、ボルドー地方に「イケメ」といった発音になるワインの産地及び銘柄が見つかりません…
唯一、私があたりをつけたのが、château d' yquem です。フランス語表記では「イケメ」という単語は y(イグレック)で始まってもおかしくありませんし、そこに「〜の」がついてシャトーディケム、という発音に変化します。
ただこれはソーテルヌ(Sauternes)地方のもので、しかもアニメにあったような赤ワインではなく、貴腐ワイン(甘口、濃厚なデザートワインに近い高級白ワイン)で知られています。
どなたかこの「1692年のchâteau Iquemo」について、詳しくご存知の方はご教示くださいませ。
アニメでは、前年の91年ものは雨が多くてできが悪かったそうです。また「80年代のボルドーは領主が無力で、農民を甘やかした」(byドゲメネ)そうで、農民は生かさず殺さず使わねば、自分たち貴族は美味しいものを腹一杯食べることができないという。
オスカル様、両陛下の御前ともあって、後ろで黙って聞いておられますが、かなりメラメラきていることは間違いありません。こういう伏線がうまいです。
 
「恐れながら」とアントワネットに謁見を取りやめぬよう進言するオスカル。オスカルの言い分に、原作では周りの貴族達も「ほう」と一目置いている描写がありますが、アニメではカット。
またオスカルの敬語も、原作「陛下のほうでも」と言っていたのでちょっとひっかかったのですが、アニメ「陛下におきましても」とより丁寧になっていて、さすが製作陣、と安心しました。こちらのほうがより、オスカルの発言らしいです。細かいことですが。
どうか国民との絆だけは絶たないでほしい。そういう忠告を、この後もちゃんとアントワネットが「自分の」問題として考え、行動に移していたなら・・・。この時はただ、大好きなオスカルがいうからそうしましょ、というレベルの判断基準しか持っておらず、嘆かわしい限りです。こんな奴が王妃なんて、「フランス宮廷は堕落しました」と言ってやりたい・・・。
 
ドゲメネの自慢する「コレル式」最新型ピストルというもの、どうやら実在したようですが確かな証拠がありません。
 
オスカル様が「口だけは一人前に理屈を並べる青二才」とは、ドゲメネ、あなたの読みは甘すぎます。
オスカル様の剣・銃の実力はいうまでもなく、人徳、知性の上に、あくまで真っ当なセリフが出てきたまでのこと。学問・教養もあんた以上、頭の回転が早く、先を読む指揮官としての資質を十分に備えた彼女は、当然、弁も立つのですよ。
ここでのオスカル様の理知的な言論攻めは、見ていてスカッとします。
ちなみに「かたはら痛いわ」は仏語版では「笑えるわ」というスタンダードな表現になっています。
「飢えのために盗みをしたとしても裁き、罰する権利は誰にもない!
 それとも公爵は自分が神だとでも言われるのか?」
オスカル様の思考はやはりキリスト教の考えに基づいたものとハッとされられたセリフです。
「裁かない」という信条ーーーそう、彼女は人が人を裁くなんてことはできないと思っているはず。我々人間を裁くことができるのは、ただ神だけだと。
「思い上がった若造」「思い上がりはどちらだ。公爵なら何をしても許されるというのか」
オスカルの怒り方のトーン、非常に落ち着いていて、極めて冷静で、とてもいい。決して勢いに任せて言っているのではない。
さて、アンリ・サルバトール・ド・ゲメネ公爵、full nameが明らかになりましたが、さらにこの後、もうお二方のお名前も明らかになります。お楽しみに。
ちなみにあの手袋はドゲメネが投げつけたんですよね? それで「オスカルフランソワ、受けて立とう」(決闘の申し渡し、と捉える)
とは話がはやい。
 
12分51秒からの「メインテーマ・少し重いバージョン」(いったい作中に流れるメインテーマにいくつバージョンがあるのだろう」
とともに、夕刻の射撃訓練シーンが萌えます。ジャルパパ、アンドレ、ジェロ様の男3人が、撃ち続けるオスカル様を見つめています。
「見事だ!」とか言ってノリノリのジャルパパ。ジェロさま、相手がローマの射撃大会で2位になったという情報を持っています。
オスカルさま、競うことには興味はなさそうですが、その時の優勝者とオスカルさまが仮に対決しても、オスカルさまが勝つような気がしますね。
それにしても前回、どうも不穏な雰囲気漂っていたアンドレとジェロですが、一応ほとぼりは冷めているんでしょうか、きになるところです。
カードのJを撃ち抜くところは、やはりベタではありますが、ドゲメネのみならず「貴族」の象徴なのだと思います。
アンドレの予想通り、オルレアン公の悪巧みもきちんと用意されていて…何度でも繰り返して書いてやる。
オスカルさま相手に、あんたたちの悪巧みが、うまくいった試しがないでしょーが!!何回言われば気がすむのだ!!
 
16分、決闘前夜の夜の一コマがまたよくできたエピソートです。アニメ製作陣、すばらしい!!
夜のお屋敷庭園に、オスカルさま、いつものスタイルで寝転んで星を見上げております。
小さい頃からの癖ですね。そしてこのしばし見なかった若草色のベスト姿ですが、これはお屋敷にいる時などのプライベート着として、
変わらず愛用されていらしゃるのでしょう。つつましいことです。
アンドレがやってきます。彼だってオスカルのことが心配なんです。
オスカル様、「やっぱり怖い…」と素直にアンドレには気持ちを打ち明けます。
相手が怖いのではない、尊い命をやり取りせねばならなくなったことが「怖い」のだと。少なくともジェロやジャルパパにはこんなことは言いません。アンドレだから、です。
 
少しでも気を楽にしてやろうと、
「樫の木の下に宝物を埋めたことを」覚えているか、と切り出しますが、オスカル様「…忘れた…」と目を閉じて小さくツレない返事。
普通なら「…ああ・・・」ぐらい言ってやってもよいのではと思うのですが、そう、14歳で軍服を身につけて以降、ひらすら走り続けてきたオスカル様にとって、幼き日の思い出などセンチメンタル以外の何物でもありません。だから、過去のことなどすべて「…忘れた…」なのだと思います。言っておきながら、二人の子供時代が脳裏にフラッシュバックしています。
ーーーあの頃は…良かった…。世の中の苦しみも、悲しみも、理不尽も、まだ知らなかったあの頃…
明日の朝途中まで供をするというアンドレに、「…お前は、いいよ…」というオスカルの言い方が、なんか優しくて、
これ聞くだけで泣けてきます。うまいんです、田島さんのトーンが。
もし明日自分が死んでも、アンドレはきっとそんな穢れなき、幼き頃の自分の姿を、思い出として抱き続けてくれるだろう。
だから「宝物はお前にやる…鉛のコマと、赤いナイフと、クマの人形だ」なのですが、
いやあ、5歳当時のオスカル様、すばらしい宝物セレクションです。土中に埋められたクマさんは普段鉛のコマで一人遊びをするんですが、敵がきたらいつでも自己防衛できるように、ジャルジェ家に代々伝わる赤いナイフをお守りに一緒に埋めてあげたのです。
まったく、将来の末恐ろしい、頭脳明晰、才気活発なお子様だったことでしょう。
 
さて、決闘の朝です。
前述したように、ここで立会人二人のフルネームが明らかになりました。
ルイ・フィリップ・ジョセフ・ド・オルレアン と
ビクトル・クレマン・ド・ジェローデル大尉 です。
ジェローデル!!あなた、顔に似合わず、ビクトルって名前だったのね!!今後、当サイトでビクトル呼ばわりしてもお許しください。
それから、今(2016年現在)私はパリのポルト・ド・オルレアンという地区に住んでいるのですが、地下鉄を降りるたび、
浮かんでくるオルレアン公の顔を振り払わなければならなくなったのは、いつの頃からでしょう・・・。くうっ。
 
日本版でも、オルレアン公、10までのカウントはフランス語です。
皆様、フランス語の「数の言い方」は、もうここで完璧でございますね!
 
馬車を飛ばすアントワネット「神様、間に合いますように」なんて言っていますが、
身なりを整えお化粧をする時間はあるんですね。ふーん。
 
さて、10まで一歩一歩進むオスカル様の頭の中に巡るのは、やはりアンドレとの幼き日々のこと。
そして、最高に研ぎ澄まされた神経ですから、舞い落ちる葉を見て、我らがオスカル様、後ろから差し込む「ありえない光線」に気づかないわけがありません。どうなるかは瞬時に予測がつきます。軍を指揮する者の勘をあまくみちゃいけません。
オスカル様は陰謀を見事回避し、「子供を打ったその憎い手」にのみ制裁を加えました。
昨夜の会話から、オスカル様のご判断の理由、悩まれた挙句の行為であったことは、視聴者にはよくわかっています。
 
アントワネット、取り乱すドゲメネに貴族として恥じゃございません?と一言付け加えるのも忘れず、しかしながらオスカル様には謹慎を言い渡します。
どうしてそうしたかは馬車の中で視聴者にのみ語られるのですが、原作ではアントワネットはその場でオスカルに「こうでもしなければ…云々」と説明しています。裏返せば、アニメオスカル様は、言われなくてもアントワネットの処置の意味がわかっているわけで。
アニメでは、そこに納得いかないアンドレが「片手落ちだ…」と呟くのですが…。
 
次回、13話は「アラスの風よ、応えて…」こちらもアニメ版ならではの追加エピソードを加え、考えさせられる回となっています。