Chose de parler de la danse ダンスについて語ること

Autoportrait de l'auteur en danse :パリ、ダンス、言葉の敷石を踏みしめて

アニはら第8話 我が心のオスカル Oscar de mon cœur

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英語版タイトルは「Oscar in my heart」でどこの歌のタイトルかと思ってしまいます。

仏語版は de mon cœur ですから、全くもって意味に違いはないんですが、なんだか響きと重みが全然違って聞こえませんか?
まさに日本語の「我が心の」という感じだと思うのです。今時「我が心の」などのたまう日本人いないですよね。あえてそんな古風な表現でしか語れない「重み」を引っさげて、ひっじょーに重要な転機であるのがこの第8話。皆さん覚えておられますか?4の倍数は前半の山場となっております。その最たるものがこの回。前半ハイライトと言っていいでしょう。ハンカチ必須です。
 
冒頭、アンドレへのオスカルビンタから始まりどきっとするのですが、これはアンドレの悪夢。
馬屋で寝泊まりしているんですか??って眠れないから、馬くんに気持ちを聞いて欲しかったのでしょう。
アンドレは彼なりに、どうしてこんな夢を見たのかフロイト要らずの自己判断を馬に向かって語りかけます。
曰く、アントワネットにつきっきりで、「なんとなくのけ者になったような気がしてーー」と素直に認めます。
「これからもどんどん位がのぼるが、俺は一介の馬ていにすぎん」
貴族と平民の差を思い知らされているところへ、ご出勤前のオスカル様登場。
アンドレの辛い気持ちなんか知りもせず
「こんなところで夜更かしか?体を壊してもわたしは知らんぞ」と冷たい一言。
オスカルにしてみれば、何も言わなくても分かり合える兄弟の延長上でいることは確か。だからこそ、下手な言葉をかけ生半可な心配なんかしないオスカルは、アンドレのことを家族以上に分かり合える、ある意味言葉なしの存在と思っているわけです。アンドレでなけりゃ、「風邪をひくぞ」と普通に言ってたとおもいます。
 
おっ、去って行くオスカル様の髪が伸びてやしません??なんか出世街道まっしぐらのオスカル様、急にぐっと責任感のある大人の顔になったような。。。成長なさいましたなあ。
 
相変わらずのアントワネットとフェルゼンのいちゃいちゃぶり。「アムール(愛)の園」って、やりすぎじゃ?いつかベルサイユ宮殿見学の折には、ぜひアムールの園が実在するのかどうか、調べてみましょう。
 
「今日はなんだか変だぞ。ため息なんか、男らしくもない」田島オスカルのあえて棒読み調がいいです。
 
でたデュバリー!まだいたの?颯爽と馬に乗ってかけて行く様をみたアントワネットが、馬に乗りたいと駄々をこねる。
6分で早くもアントワネット専用白馬が登場。あのはしゃぎっぷりといったら、何も起こらないはずがありません。
原作ではアンドレがつまづいたことになってますが、こちらはそのような描写はなく、むしろアントワネットがはしゃいだために馬が暴走した感じです。
またこれも原作にはありませんでしたが、アンドレが、アントワネットを乗せて走る馬のたずなを、しっかと握りしめたまま引きずられていきます。ケガとまではいかなくても、これではアンドレも相当な痛みを体におったのではないでしょうか。
「絶対にはなすもんか!」の叫び虚しく、手綱は自然に切れてしまいます。
その横を、オスカル様がものすごい速さで駆け抜けていきます。
こういうシーン、アニメで観ることができて、ほんとうに迫力が増しますね。
音楽も相まって、いよいよオスカルが鞭を水面に放り投げ、アントワネットを抱いて落馬するシーンはコマをスローモーションで回しており、これは原作よりも、はるかにインパクトのあるシーンとなっております。それまでの疾走感から、一挙静止画にはいったことで、
視聴者はことの成り行きに唾をのんで画面に食い入るしかありません。
オスカル様は刺さった枝で左腕を負傷され、血がでております。これも原作にはなかったシーン。白い軍服に赤い血が広がっております。
この状態でどこまでアントワネットを抱えて歩けたのかはわかりませんが、おそらく後続のお馬車が迎えにすっとんできたものと思われます。
 
さて宮殿へ戻って、本日の「GOODjob賞」、腹心の部下ジェロ様です。彼がアンドレが逮捕された、ということを伝えに来なければ・・・ジェロ、ナイスプレーです。
オスカル様ときたら「いいかげんなことを言うな!」とジェロの胸ぐらを掴んで、怒鳴ります。
逆説的に聞こえるかもしれないけれど、こうした所作って、信頼関係がなきゃ、いくら血気盛んな当時のオスカル様であっても、
絶対にしないと思われます。そう考えると、これまで幾多の業務を乗り越え、行動をともにしてきたジェロだからこそ、
まるで男同士みたいに、こんな風につっかかることが可能だったわけです。幸せな男、ジェローデル・・・オスカル隊長の熱さに、人として尊敬もし、そろそろ別の意味でも惹かれはじめているのではないでしょうか。
 
「アンドレ、わたしはお前を死なせはしない、死刑になんかさせてたまるか!」廊下ダッシュするオスカル様。
ついこの間までは「俺」だったのに、対アンドレにすでに「わたし」となっています。ここでも明らかに髪が伸びているのが確認できます。
一瞬、画面全体が黒で描かれるのですが、左腕から滴り落ちる血が、そこだけカラーで、まるで紅薔薇の・・・花びらのごとく散っていきます。
これはうまい演出だな、と感心してしまいました。
 
12分、絶好のタイミングでオスカル到着!腕の痛みなんざ忘れて無我夢中で走ったに違いありません。
ちなみにアンドレを牢獄へひっ立てようとした両兵士は、あの制服からすると近衛兵じゃございませんか。
ここで名シーン、オスカル、剣をぬき、天に向かってまっすぐに突きつけながら、ジャルジェ家の名において、正式の裁判を要求します。
さもなくば、アンドレの責任は主人であるこのわたしの責任・・・この場でわたしの命を絶ってください、と堂々と宣言し、剣を置きます。
 
お約束、フェルゼン伯もオスカルの隣に並び、わたくしめの命も・・・とお願いする。
その姿に、オスカルは自分の立場も忘れて
「なんという男だフェルゼンーーー男らしい正義感の持ち主だ」と感動します。
 
「フェルゼン伯、心から感謝する。この恩は、決して、決して忘れないぞ」とは、原作ではオスカルの口から直接フェルゼンに向かって語られた言葉でしたが、アニメでは口をきゅっと結んで、ただフェルゼンの横顔を見つめて、オスカルの心の中でのセリフとなっています。
 
オスカルはここでは単純に、素直に嬉しかったし、心を動かされたんだと思います。損得なしで、ただ正義のために命をかけられる真の男、
まっとうに自分と渡りあえる人間に初めて出会えた喜びを感じたのではないでしょうか。いってみればこの二人は正義感、というその一点で似た者同士であり、この件をきっかけに、「アントワネット様に近づく胡散臭いスウェーデン貴族」から、互いを尊重できる間柄となった。
いってみれば、常に先頭を走り続け、人々のお手本とされるような言動が当たり前であったオスカルに、初めて、真に男らしい男が現れたわけです。向上思考の持ち主オスカルが「この男」に、自らの理想像を重ねたとしても不思議はありません。もちろん決して男女の意味ではなく、オスカル自身がそのような人間(男)になりたい、という願望と、それゆえの敬意です。
 
さてジャルジェ家の主治医、ラソンヌ先生初登場でございます。3歳でオスカルが熱を出した時から診ているそうですが、
これから何かにつけて登場しますから、どうぞお見知りおきを。
 
診察のため、ヤロー二人に外へ出ろというばあや。アンドレがそうだね、という一方、フェルゼン伯、男同士でもからだはみせられないってわけか?と毒を吐きます。
ばあやが「うちのお嬢様(mademoiselle)になんてことを!」と言って、ようやくフェルゼン「mademoiselle??」
ーーーあ、あいつ、女だったのか、ということに気づきます。
 
「オスカルは男だ、これからもだ」なんていって馬屋に駆け込むアンドレ。その姿をみれば、正真正銘男同士、であるフェルゼンには、アンドレの気持ちはピンとくるものがあったでしょう。
「どうりで・・・線が細すぎる あまりにもはかない姿をして・・・だがなんてやつだオスカル!君は男より男らしい」なんて
変な感動のされ方をしています。
 
オスカル、目を開けてくれ・・・アンドレの独白。ここで冒頭のアンドレの夢のシーンが回想されます。
おれは恥ずかしい、一瞬とはいえ、お間を疑った俺が恥ずかしい・・・アンドレは心底自分の情けなさを悔います。
アニメベルバラ、巧みな構成力です。
 
朝になり、オスカルがそっと目を覚まします。
「・・・夢をみていた・・・幼い頃の・・・アンドレが泣きそうな声でわたしを呼んでいたっけ・・・」
オスカル様、完全に「脱・俺」です。大人になられましたなあ・・・。
幼年時代の回想シーンの美しかったこと。どうやら野原で寝っころがるあのスタイルは、オスカル小さい頃から好きだったようで。
オスカルを夢の中で呼んだのは、幼年時代のアンドレではないと思います。
きっと一晩中起きて、オスカルのそばで祈り、懺悔を続けていたアンドレの声が、三途の河を渡りかけたオスカルを引き戻したのではないでしょうか。二人はお互いに、必要としあっている。そのことが通じたのだと思います。
 
「フェルゼン、朝早くからありがとう」「やれやれこれで一安心だ」
フェルゼン伯は昨夜はおかえりになられた様子で、ちゃっかりアントワネット様の今朝の最新情報まで仕入れてきております。
それにしてもフェルゼン、ちょっとこの声は違和感あるんですよねーーー。なんというか、この年にしてはダンディーすぎるというか。
 
そして、柱にもたれているアンドレに、オスカルは「おまえにも心配をかけたな」と声をかけます。
ちょっとディープなアンドレの雰囲気を察してかーーーつまり、アンドレが感じているであろう責任、を少しでも軽くしてやろうと
オスカル様の優しい気遣いが「王族に怪我をさせて首が飛ばなかったのはおまえぐらいだぞ」というセリフにつながり、
その場みんなを笑顔で和ませることに成功しています。
ただ一人ーーーアンドレ本人だけは、その笑いの輪に加わることができず、大きな目を見開き、ポロポロと涙をこぼしながら、
「オスカル・・・おまえってやつは・・・」と心の中でつぶやく。オスカルのそうした気持ちが、彼にはわかりすぎるほどわかるから。
 
オスカルが扉を開けて止めに入ってきた場面、剣を高らかに築き上げた場面、その神々しいまでの後ろ姿が、
今、彼のまぶたにフラッシュバックします。そしてアンドレはこの日、涙の中でかたく、かたく誓うのです。
「おれはいつかおまえのために命を捨てよう・・・おまえが昨日、この俺のために命をかけてくれたように・・・
いつの日かアンドレは、おまえのためにこの命を賭けるぞ!(×3回、リフレイン)」
このセリフは志垣さん、迫真の演技です。魂がこもっていて、ほんとうに震えます。
そしてアンドレが剣を手に、オスカルの横顔を守ろうとしている姿で fin ・・・・。
 
ああ、前半の涙、流し尽くしてしまったわ・・・という、若干放心状態でエンディングを聞くこととなります。